花への照射角度からすると午後3時頃の陽射しだろうか、壕の照り返しがとても柔らかで、思わず眠気を誘われてしまうようだ。
近年、ここ千鳥ヶ淵は花の季節、それも休日ともなると立ち止まり禁止、通り抜けしか許されなくなるほどの人混みで、桜を見るにはただ真上を見上げるしかないという、他人から見たら実に間の抜けた観桜会。眼下の壕に大きくしだれかけた桜を見ようにも、他人の頭越しという始末で女子供にはまことに気の毒しごくである。
ただ今回は、カメラマンが切り取ってくれた見事なアングルのおかげで、辺り一帯を独り占めできた。まさに足元から春が浮き立ってくるようだ。